『ドラゴンクエスト』をクリアするまでに自分が何匹のモンスターを殺したか、そんなことを覚えているプレイヤーはいないだろう。そもそもRPGでモンスターの死は、「たおした」や「やっつけた」のような言葉によって巧妙に隠されている。
「もう、勇者しない。」
このキャッチコピーと共に、1997年にラブデリックから発売されたPSソフト『moon』は、既存のRPGを新たな視点から捉えなおした革新的なゲームだった。
残念ながら『moon』は、今年発売されるPSクラシックに収録される予定がない。しかし、だからこそもう一度『moon』に思いを馳せる機会があってもいいだろう。ゲーム史に名を刻んだ、愛のゲームについて振り返ろう。
アンチRPGという発想
『moon』のテレビCMは、「もう、勇者しない。」というキャッチコピーと相まって非常に印象に残る。
内容は以下の通り。
『ドラゴンクエストIII』の勇者にそっくりな姿をした男がタンスを開ける。すると、その家の家主が「おやめください!」と勇者に嘆願する。しかし勇者は家主の声には耳を貸さず、タンスの中のコインに夢中になっている。
説明するまでもなく、これはRPGで他人の家を勝手に物色できる仕様を風刺したものだ。そして、『moon』のテーマはまさにこのCMのような「既存のRPGへの批判や風刺」にある。
まさかのゲーム内容!
『moon』のイントロでプレイヤーは、ゲーム内ゲーム「FAKE MOON」をプレイすることになる。『ドラクエ』と『FF』を混ぜこぜにしたようなこの2DRPGは特に面白みもなく、あっという間にラスボス戦まで進んでしまう。しかし、ラスボス戦が終わる直前に「FAKE MOON」を遊んでいた、『moon』の主人公はゲームの世界に入り込んでしまう。
さて、ここからがゲーム本編「REAL MOON」なのだ。
この世界の勇者は傍若無人な破壊者として描かれている。勇者は可愛らしい動物スライを一刀両断し、民家から「でんせつのよろい(女性用下着)」を盗み、ただの犬を殺そうと追っかけ回す。
私たちRPGで何気なく行う戦闘やアイテム探しは、視点を変えればただの暴力でしかない。『moon』はプレイヤーにその事実を突きつけてくる。
■経験値ではなく「ラブ」を集める
「ラブ」を集めること。それが『moon』のほぼ唯一の目的だと言っていい。本作には一貫したストーリーはほとんどない。ゲームは主人公が行く先々で起こる断片的なエピソードの積み重ねで進んでいく。
ラブを集める方法は大きく分けてふたつ。ひとつは、勇者に殺されてしまったアニマル(勇者視点ではモンスター)の体に魂を戻してあげること。そしてもうひとつは、『moon』世界の住人と素敵なコミュニケーションをとることでラブが発生する。
たとえば、城の兵士イジリーのお願いを聞いて、毎週日曜日に彼のエアプレーンの練習に付き合ってあげれば、そのうちイジリーは上手にエアプレーンを飛ばせるようになり、ラブが生まれる。
ラブを集めるとラブレベルが上がりフィールドでの行動時間が増えるほか、「愛の免許皆伝」「愛の並卵味噌汁」「愛の大統領」など素敵な称号をつけてもらえる。
可愛らしさと憎たらしさを併せ持つキャラクターたち
『moon』には他のゲームにはない独特の世界観があるが、その世界観を形作っているのは個性豊かなキャラクターたちだ。ここで全員を紹介できないのは名残惜しいが、筆者がプレイしていて特に印象に残ったキャラを紹介しよう。
モンスターの魂を神の使いと崇め、最終的に自分が神になってしまうアダー。微妙に難しいミニゲームを仕掛けてくるのだが、ミニゲーム時の音楽が素晴らしく何度でもプレイできてしまう。
夜な夜な謁見の間に忍び込んで、歌い踊っている兵士のフレッド(元ネタはもちろんQEENのフレディ・マーキュリー)。フレッドの他にも、『moon』には洋楽のアーティストをもじったアニマルやキャラクターが多数登場する。
ストーリーの各所で主人公の行動に文句をつけてくる、エコ倶楽部の3人(それぞれ森林保護、海洋保護、フェミニズムの担当分野がある)。説教を食らった後にラブが発生する原理がイマイチよくわからない。
ただ優しいだけでなく、それぞれ個性を持ったあくの強いキャラクターは、『moon』の世界観をより独特のものにしている。
『moon』と時代性
強さやお金よりも、目の前の相手とのコミュニケーションを大切にしたい。
「バブル期」という経済の成長神話が崩壊した後に作られた『moon』は、そんな時代の気分のようなものを如実に反映していたのではないだろうか。
それもラブ。これもラブ。愛に溢れ、いつまでも愛されるゲーム『moon』
PSというハードウェアに、ラブデリックというインディー的なノリを持った開発元、そこに時代の空気が重なったことで、幻の名作『moon』は誕生したのである。
PSクラシックにこの名作が入っていないことは残念だが、せめてこの記事で少しでも『moon』について知る人が増えてくれたなら幸いだ。
激烈プレミアム価格70,000円超え!中古良品で『7,560円』で販売されているのを管理人は発見した!
現在『moon』は未使用で70,200円で販売されている幻の中の幻と言える超希少ゲームソフトだ!
中古でも3万円代後半~4万円が相場だ。
難ありソフトでも9,000円近くする。
ところが管理人は『中古良品』で7,560円で販売されているのを発見!
それがこちら!
![]() | 価格:7,560円 |
これもまた『幻の価格』と言える!
実店舗との並行販売なので、記事を読んでプレイしたいと思った方は今すぐに!
この機を逃せば4万円くらい出さないと買えないのだ。
くれぐれも『転売』という邪な考えは持たないでいただきたい。
手放すならせめてプレイしてからにしてほしいと願う。
■ちなみにこちらが未使用品
![]() | 価格:70,200円 |
こちらを購入する人がいるとしたら、その人こそ本物の「もう、勇者しない。」という名台詞がふさわしい人物だ。
管理人の感想
こういった「幻のソフト」と呼ばれるゲームは、得てして来月発売されるPSクラシックもそうだし、ニンテンドークラシックミニシリーズなどに収録されないものなのだ。
だって「幻」だから。
そして、この記事をここまで読んでくれるような変人奇人が好むゲームだから。
僕はそんな変人が大好きだ。
友達になりたいとさえ思う。
僕が好きだったドラゴンボールZ超サイヤ人伝説(RPG)もニンテンドークラシック スーパーファミコンには入っていない。
僕はそのソフトで血の滲むような努力をして、チャオズをギニュー以上に強く育てた変人だ。
変人バンザイ!!
幻のソフト『moon』ネットの声
制作サイドの発想の「自由」があったからなぁ。
流行りものに乗って似たような物を作るよりも、性癖が丸出しな作品が溢れていた。
今思えば本当に良い時代だった。
今でもストアに並んで欲しい物もあるけど、元の会社が潰れていたり、連絡が付かないと駄目なのかな・・・。
子供の頃、母親が何気なく買ってきたゲームがこれでした。そこから大人なったいままで、何度も繰り返し遊んでいます。
大人になった今だからこそ、当時の製作者の毒気や茶目っ気に気づいて、思わず考えさせられる良いゲームです。
また、個人的にはオヴォン、コヴォンが好きです。
当時のPSは、玉石混交の中、たまに歪だけど輝きを放つ“石”があるという印象。
ラブデリックのクリエイターが今もゲーム制作されてるのを知れてよかった
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