ゴキブリを奴隷のように支配したり、泳げないカマキリを入水自殺させたり、アリの脳を支配し最適な場所に誘って殺したり、あなたはそんな恐ろしい生物をご存じだろうか。
「寄生生物」と呼ばれる一見小さな彼らが、自分より大きな宿主を手玉に取り翻弄し、時には死に至らしめる様は、まさに「えげつない!」。
そんな寄生者たちの生存戦略、第2回は「ゴキブリを奴隷化する宝石バチ」の続きです。
ぼーっとするゴキブリ
他の昆虫やクモ類などを捕らえて巣に持ち帰り、自分の子どもの餌にするハチは「狩りバチ」と呼ばれます。これらのハチは、獲物を持ち帰る際、1発の毒で獲物を仮死状態にして巣に持ち帰ります。つまり、お持ち帰りできる大きさの獲物を狙います。
しかし、エメラルドゴキブリバチの獲物は自分の体よりも何倍も大きいワモンゴキブリです。仮死状態になってしまったら自分の力では、巣に持ち帰ることができません。そのために、仮死状態にはせず、より複雑な毒を組み合わせて、獲物を自分の足で歩かせるのです。
2回目の毒を脳に注入されたゴキブリのその後
では、2回目の毒を脳に注入されたゴキブリのその後を見ていきましょう。ゴキブリは麻酔から覚めると何事もなかったように起き上がります。ほぼ無傷で元気に生きてはいます。しかし、1回目の毒を注入された時と違い、もう暴れたり逃げようとしたりはしません。それは、少し前にもお話しましたように、逃避反射を制御する神経細胞に毒を送り込まれているからです。逃げる気を失ってしまったゴキブリはまるでハチの言いなりの奴隷です。ゴキブリは自分の足で歩くことも出来ますし、普段通りの身づくろいなど自分の身の回りのことをすることも出来ます。ただし動きが明らかに鈍く、自らの意志ではほとんど動きません。このように2回毒を注入されたゴキブリは約72時間、遊泳能力や侵害反射が著しく低下しますが、一方で飛翔能力や反転能力は損なわれていないことが研究により明らかとなっています。
大事な触角が!
ただ、ぼーっと突っ立っているゴキブリを見ると、エメラルドゴキブリバチは、さらに、ゴキブリに酷いことをします。ゴキブリの触角を2本とも半分だけ嚙み切るのです。ゴキブリの触角は、人間の想像以上に大切な器官です。この触角を頼りに生活しているといっても過言ではありません。まず、この触角で障害物を察知しています。触角に感じる風の動きや刺激によって、障害物があるのかないのかを認識し、それによって自分の進む方向を決めています。また、餌を探すときにも触角を使います。あの長い触角をフリフリさせて、餌を察知します。
そんな大切なゴキブリの触角をエメラルドゴキブリバチは容赦なく真ん中から切り落とします。切り落とされた触角からは当然、ゴキブリの体液が溢れます。ハチはこの体液を吸う行動を見せます。
この行動はハチが単に自分の体液を補充するため、あるいはゴキブリに注入した毒の量を調節するためであると考えられています。毒が多すぎるとゴキブリが死んでしまい、また少なすぎても逃げられてしまうからです。
この脳に対する毒の注入と、それによる行動の制御は、まさに人間でおこなわれた“ロボトミー手術”のようです。
人間で実際におこなわれていた恐ろしい脳手術
脳の前頭葉の一部を切除あるいは破壊するロボトミー手術は、1935年にアントニオ・デ・エガス・モーニスという神経学者が考案した療法です。興奮しやすい精神病患者や自殺癖のある鬱病患者にこの手術をおこなうと、感情がなくなり、おとなしくなりました。そのため、この手術が精神疾患に絶大な効果があるとされ、この手術の開発の功績によってモーニスはノーベル賞を受けています。そして、その後、20年以上世界で大流行し、日本でも1975年までおこなわれていました。
ロボトミー手術は「脳を切り取る手術」のため、頭蓋骨に穴をあけて長いメスで前頭葉を切る方法や、眼窩からアイスピック状の器具を打ち込み、神経繊維の切断をするといった方法がとられました。
しかし、1950年代に入ると、この手術の恐ろしさが徐々に明るみに出てきます。ロボトミー手術を受けた患者は、知覚、知性、感情といった人間らしさが無くなっているという後遺症が次々と報告されました。そのため、1960年代には人権思想の高まりもあってほとんどおこなわれなくなりました。
日本では1942年に初めて行われ、第二次世界大戦中および戦後しばらく、主に統合失調症患者を対象として各地で施行されました。その間に日本でも3万人から10万人以上の人が手術を受けたと言われています。さらに、日本では、このロボトミー手術を受けた患者が、同意のないまま手術をおこなった医師の家族を、復讐と称して殺害した事件まで起きています(ロボトミー殺人事件)。
犬の散歩ならぬゴキブリの散歩
話を哀れなゴキブリに戻しましょう。ロボトミー手術のようなことをされたゴキブリは、逃げる気を失い、触角を半分切り取られてもぼんやりとしており、本来の機敏さもありません。そして、エメラルドゴキブリバチがゴキブリの触角をちょいちょいと引っ張ると、その方向にゴキブリは歩いていきます。まるで犬の散歩のようです。そして、ハチの促すままにある場所へと自分の足で歩いていきます。
着いた場所は、真っ暗な地中の巣穴です。これはエメラルドゴキブリバチの母親が、自分の子どもを育てる場所として事前に作っておいた巣です。ゴキブリは自分の足で歩いて巣穴の奥深くに到着すると、長径2ミリほどのエメラルドゴキブリバチの卵を肢に産み付けられます。その間もゴキブリはじっとしています。
卵を産み付け終わると、ハチは地中の巣から自分だけ外に出ます。そして、外側から、巣穴の入り口を土で覆います。これは、自分の卵とその卵を産み付けられたゴキブリが他の捕食者に見つからないようにするためです。そして、ハチは次の産卵のために、またゴキブリを探しに飛び立ちます。閉じ込められたゴキブリはというと、巣穴の出入り口を塞がれても、相変わらず巣の中でおとなしく待っています。何を待っているのか。それは、もちろん、ハチの子が卵から出てくるのをです。
身体を食い荒らされてもなお生きる
ハチの子が卵から孵るまでは3日間程度あります。その間も、ゴキブリは肢の根元についている卵をくっつけたまま、静かに自分の身づくろいなどをして過ごしています。そして、エメラルドゴキブリバチの幼虫が卵から孵ると、ハチの子どもはゴキブリの体に穴を開けゴキブリの体内に侵入していきます。ゴキブリはもちろん生きていますし、そしてある程度自由に動き回れる力も残っていますが、なんの抵抗も示しません。そして、その後の約8日間もの間、ゴキブリは生き続けたまま、ハチの子どもに自分の内臓を食されます。生きたまま食すのには理由があります。このエメラルドゴキブリバチの幼虫は死肉ではなく新鮮な肉から栄養を摂取したいのです。そのため、自分が蛹になって肉を食べなくなるぎりぎりの時期までゴキブリを生かすように食べ進めます。
死んでもまだ役に立つゴキブリ
ゴキブリの内臓をたっぷりと食べたエメラルドゴキブリバチの幼虫は、ゴキブリの体内で大きくなり、やがて蛹になります。そして、ゴキブリはハチの子どもが蛹になって体を食べなくなると、その使命を果たし終わり、ひっそりと息を引き取ります。
しかし、内臓が空っぽになったゴキブリにもまだ役割はあります。内臓は空っぽですが、外側はゴキブリそのものです。そして、昆虫は外骨格といって、外側の殻が最も固く、内臓や筋肉を守っています。エメラルドゴキブリバチはゴキブリの殻の中で蛹になります。ハチの子どもは蛹の間の4週間、動けず完全に無防備な状態です。その間をこのゴキブリの固い亡骸で守ってもらっているのです。
そして、ハチの幼虫が蛹になって4週間後、成虫となったエメラルドゴキブリバチは、ゴキブリの亡骸を突き破り、美しいエメラルド色の姿で飛び出してきます。
ゴキブリ対策として、どう?
エメラルドゴキブリバチの成虫の寿命は数ヶ月あります。そして、ハチのメスがゴキブリに数十個という卵を産み付けるには1回の交尾で十分です。
じゃあ、衛生害虫としても問題になるゴキブリをエメラルドゴキブリバチにどんどん狩ってもらえばいいのでは? そう思われた方も多いでしょう。もちろん研究者にもそう考えた方はいました。
1941年、エメラルドゴキブリバチはゴキブリの生物的防除を目的としてハワイに導入されました。結果はというと、残念ながらゴキブリ防除には期待していたほど効果がありませんでした。なぜなら、エメラルドゴキブリバチを大量に放飼しても、このハチは縄張り行動が強いため、広い範囲に広がってはくれませんでした。また1匹あたりで数十個という卵しか産まないため、ゴキブリの繁殖力に比べると歯が立ちませんでした。
日本にもいるゴキブリを狩るハチ
エメラルドゴキブリバチは日本には生息していませんが、日本には近縁の2種類のセナガアナバチ属 Ampulex がいます。セナガアナバチ(サトセナガアナバチ)とミツバセナガアナバチです。日本産の2種はエメラルドゴキブリバチよりもやや小ぶりで、体長は15~18ミリ程度です。
セナガアナバチは本州の愛知県以南、四国、九州、対馬、種子島に、ミツバセナガアナバチはさらに南方の、奄美大島、石垣島、西表島に生息しています。この2種はエメラルドゴキブリバチ同様体色は金属光沢を持ったエメラルド色で、クロゴキブリ、ワモンゴキブリなどを幼虫の餌とすることが知られています。
参照元:https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20190318-00556099-shincho-sci&p=1
エメラルドゴキブリバチのロボトミー手術によって自らからの意思を失い操作され、悲惨で酷い最期を迎えるゴキブリ。ネットの声
人間に置き換えてみた。
この記事楽しみ
しかし、この蜂は怖いな。
読みながらゴキの姿を想像してしまい
気分が悪くなってしまった
だが面白かった!
ありえないって思うけど
昆虫界ではわりと普通の事なのかもね。
おお、怖い!
昆虫に生まれなくて良かった。
凄く興味深い記事でした。
というか。上手いし、気合いが入ってる。
本文だけでなく、イラストやモノローグまで、多重構成で作られていて。それぞれが巧くて。
相乗効果がハンパないですね。
シリーズの続きが楽しみです。
そのうち本にできたら、また話題になりそうですね。
(そのときはオールカラーでしょうか)
期待してます。
そしてまたその子も母親のゲノムからそのウイルスを受け継いでいくらしい
HUNTER×HUNTERでもアリ話でありましたね。
自然界の生存競争が凄すぎる
恐ろしい…
気持ち悪くて背中がゾクゾクしながらも興味に勝てず読み終えました。
面白いけどダメだ、ゴ○○○って名前が出ただけで。
でもこういう話は好きなんだ。
とてもいい記事だし、子供には特に知って欲しい内容。
次が楽しみです。
怖れもなく、悲しみもなく…か。
せめて苦痛なく死を迎えられるのだろうか。それだけが気になる。
ロボトミー手術と言えば手塚治虫のブラックジャックに封印作品としてあった気がしますね
かさぶたを、取ったら、2cmくらいの蜂が出てきた。
サナギの状態だと思う。
見ていた人は、悲鳴をあげた。
徐々にゾンビになってく人間の日記みたいなのがあった気がしたが…
それを思いだした…。。。
常識では到底解けない。
ロボトミー手術は「脳を切り取る手術」のため、頭蓋骨に穴をあけて長いメスで前頭葉を切る方法や、眼窩からアイスピック状の器具を打ち込み、神経繊維の切断をするといった方法。
1950年代に入るとこの手術の恐ろしさが徐々に明るみに。ロボトミー手術を受けた患者は、知覚、知性、感情といった人間らしさが無くなっているという後遺症が次々と報告されました。1960年代には人権思想の高まりもあってほとんどおこなわれなくなりました。
主に統合失調症患者対象10万人以上。モーニス博士ロボトミー手術も宝石バチも怖すぎ.ロボトミー手術ノーベル賞剥奪すべきや。
これと同じと思うよ。
更新これからも待ってます。
「えげつない」なんて、人間にだけは言われたくはないだろう。
自然ってすごすぎる。
もしかして、国益を損なう言動を繰り返す鳩山由紀夫氏は特亜蜂に同じことを施されたのではと、ふと思った。
そのハチさん、Gを絶滅させてくれないかな〜。
しょうもないゴシップ記事やめてこういうのどんどん発信して欲しい!すごく面白かったです、新潮さん。
途中でやめられない。
違法薬物か。
面白い
そして怖い
意思を奪われ体内を食い荒らされ…
怖いなぁ
「イーッ!!」と言いそうだ。
読み応えあっておもろかったなぁ。
怖い…怖いよ…
生きながらって怖いわー!
さすがにかわいそうと思った。
うちの猫は3~4発で仕止める。
まだマシだよね。
いつもは字面さえも見るのが嫌な「G」なのに、この記事に関しては全然そんなことなく読めました。
だけど飯を食いながら読んじゃった!
こええよ!
恐る恐る、そしてやっぱり引き込まれ
「うぉ!」や「ひゃ~!」を連発しつつ読んでしまいましたw
あれ?
私達読者は操られてる???
でも、我慢して何とか最後まで読み終えた。
感想は………どちらも超怖い。
ゴキ=従業員
一緒やん。ウチの会社。
マフィアの拉致。
あの時に登場した昆虫の生態を本当なのか色々調べたのでよく覚えてます。
しかし生かされたまま食われるってのは何とも恐ろしい。
カマキリのハリガネムシや確かカタツムリにも寄生虫がいたはず。
昆虫の世界ってのは何とも恐ろしくも不思議な世界ですよね。
ネズミでは明るい方向に出てくるとか実用化されている。
自然界の進化で、なんでその方向に進化したの?思うのあるね。
これが人間だったら間違え無くハリウッドの特撮映画になりますね〜
面白い
そうそう、ナショナルジオグラフィックで見たゾンビアリも
細菌に寄生されてコントロールされるんだった
虫の話大好き、絵も味があっていい
可哀そうだけど、自然界ってこういう容赦ないものなんだよね、厳しい。
話が変わるが、最近メディアはロボトミー手術を差別用語と同じく使わないようにしてる気がする
怖いけど…スゴいね。
種の繁殖に他種を利用するのは想像出来るが、生かしたままって‥
すごいなぁ
じわじわ~っと金を吸いとって抜け殻にして旅立つ虫のいいメス
あいつら頭なくても生きてるくらいヤバいからな汗
しかも死因は餓死らしい。byパンダP
記事を見つけて嬉しかった。しかし恐ろしく賢いというか、残酷なハチですね。ゴキブリでよかったわ。
それが普通だって考えてた事
カタツムリに卵を産み付けて幼虫が脳を支配すると枝の先に行く指令を出しカタツムリの目に入り込んで動き鳥を呼んで食べてもらい遠くで糞と共に落とされる生き物いたな
奴等は何の為に生存するんだろう
ローマ法王猊下にすらも見放された、
某隣国の連中の遺伝性脳疾患には一番効果があるんじゃねのかね?(笑)
卵産み付けられた側がもう既に死んでるのに気付かず、
中身食い尽くされるまでおとなしくしてるとか怖すぎ
覚えた
管理人の率直な感想
人生の中でこんなにゴキブリに哀れみを持ったことがあったでしょうか。
悲惨すぎるでしょう!
脳に毒を注入され、ロボトミー手術のように自我を持たぬ生き物と化し、好きなように操作されて無抵抗の状態で生きたまま食べられる。
その上、死しても尚その体の中で自分を食べたハチの子供たちが暮らす。
そこには生物としての尊厳もへったくれもありません。
エメラルドゴキブリバチ恐るべし・・・。
有害菌の宝庫とも言えるゴキブリですが、もうどっちが正義か分かりませんね。
尊厳と言えば、人間による人間に対してのロボトミー手術ですよね。
記事内でも触れていますが、日本でも実際にロボトミー手術を行った医師が患者に殺害される殺人事件が起きている。
僕の記憶によると、そのロボトミー手術を受けた殺人事件の加害者は、確かに気性が荒い部分があり度々問題は起こしていたものの、その問題の内容としては加害者側に大義があったものがほとんど。
半ば強制的にロボトミー手術を施され、感情を失った。
普通の会社では頭が働かないため仕事が出来ず務まらない。
そこで弟が経営する会社に入社した。
国は忘れましたが、綺麗な風景で有名な国に飛ばされた。
その国の夕日を見た時に「本当ならばこの風景に感動するはずなのに、なぜ今の自分は何も感じないのか」と思った。
仕事は出来ない、何の感情も湧かない。
全ては、あのロボトミー手術のせいだと。
最後に「殺意」という意思だけが芽生えた。
その対象は自分にロボトミー手術を施した医師だった。
大まかにそんな感じです。
人としての人権も尊厳も無視した愚行とも言える手術。
それがロボトミー手術。
それをまた何の感情も持たずに本能でゴキブリに行うエメラルドゴキブリバチの怖さたるや。。。
日本にもいるんですね、ゴキブリを狩るハチが。
しかし愛知県以南にしかいない!
僕が住んでる東京にはいない!
なんてこった。
前回の記事のコメントから何度も「テラフォーマーズに出てきた」と言われていますね。
ご紹介しておきましょう。
■テラフォーマーズ 内容■
「全く見た事のないものと出会う時、人間は人間ではいられない。」西暦2599年。
火星のテラフォーミングが進行し、その地表は一面の苔とある生物で覆われていた。
そして、選ばれし15人の若者達は重要任務の遂行を期待され、有人宇宙船『バグズ2号』に搭乗し、火星へと向かう。かの地で彼らを待つ、想定外の進化を遂げた生物の正体とは…!?
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